2011年 11月 28日
岡村さんとアモレイラ |
岡村淳さん。「すばらしい世界旅行」「知られざる世界」など数多くの番組のディレクターを務められた後、フリーランスとなってブラジルに移り住み、日本からのブラジル移民を追うドキュメンタリー作家になった方です。
自身の人生経験を織り込み浦島太郎の物語をアップデートした老人を追う「郷愁は夢の中で」、地面に立つ十字架が「土」の字に見えるという、死期の近い老夫婦が主人公の「ブラジルの土に生きて」などなど、知られざる日本人の姿が、岡村さんの目=カメラを通して語られます。
作品は数十分のものから5時間に及ぶ大長編まで多種多様で、それは作品が求める必然によって決まっている、という感じ。撮影、編集、ナレーションなどすべてを1人で手がけ、一貫して自身が立ち会うことを条件に、年に数回来日して全国各地で上映会を開いておられます。作品は市販されていませんので、作品に触れることと作者に会うことがほぼイコール。しかもこちらは映画を観ているはずなのに、作者からもばっちり見られているという、ほどよい緊張感の中での真剣勝負が必須となります。
その岡村さんと、先日再会しました。場所は尼崎市内の酒屋・庄本商店。尼崎はもともとブラジルからの出稼ぎ労働者が多かったことから、ブラジル食材を売るようになったというお店です。ここで、最新作の「あもーる あもれいら 第3部・サマークリスマスのかげで」の試写会が開かれました。
ブラジルはパラナ州にある、アモレイラという小さなまちにある保育園の1年間を綴った3部作の完結編。壮絶な保育園の1日と主な登場人物を紹介した第1部「イニシエーション」、スラング入りまくりの会話主体の保育園児たちに、聖書の美しい言葉で競わせるお話大会が山場の第2部「勝つ子 負ける子」。さまざまな家庭の事情を抱える子どもたちと向き合いながら奮闘する、園長兼シスターの日本人女性に密着しています。登場する保育所は、実はこの酒屋に集まった人たちと物資やイベント出店の売り上げを送っているところだったという事情もあって、特別の感慨をもって観た作品。じつは1部と2部は、いずれも尼崎で上映会をさせていただいたことがあり、大きな反響がありました。
その第3部を世界で初めて観る、という大変光栄な場に立ち会うことになったわけです。店主の親子、NHKディレクター、神戸新聞記者、日系ブラジル人と、錚々たる顔ぶれが仕事そっちのけで集まり、作者も緊張する中、上映が始まりました…。
ドキュメンタリーであるというのに、いろいろな登場人物が出てくる群像劇のように見え、それぞれが(取材期間の中で)着地する完結編。あらすじを追うのは無粋なので避けたいと思いますが、1つだけ感想を書かせてもらうと、僕は孤軍奮闘するおばちゃんシスターに目が釘付けでした。子どもの行動から家庭の様子を敏感に察し、当事者に会いに行って何をするかと思えば、直接会って話をする。相手が困っていたら寄り添って、ひたすら聞き役に徹するという姿です。後からのインタビューで、「親からの悪影響は確実に子どもに受け継がれる」といった趣旨のことを淡々と語る姿には悲観も楽観もなく、同時にブラジルも日本もないと感じました。
第1部を拝見したのが2007年のことですから、1年間のできごとを4年に分けて、冷却期間を置きながら見たことになります。これを一気に観るのは、ちょっと辛かったかもしれません。やはり前2部を観ているほうがより深く感情移入できる作品ですが、これ1作でも充分理解できるようにナレーションが入れられています。
終映後は、会場が会場だけにアルコールを投入しての交流会。ナレーションではあんなに丁寧に喋っていた岡村さんが、ものすごい早口でまくし立てるさまに、みな笑いが絶えないのでした。あれは、初映の緊張感から解放されたのと、シリアスな映画を観たあとだから余計に、ということだったのかもしれません。
「あもーる あもれいら 第3部」は、試写会の意見と反応をもとに(!)最終調整し、来春の来日から順次上映していくそうです。尼崎の上映日程は未定ですが、できれば西宮のシンパのみなさんと共催できれば、という話をしています。今回の残りのスケジュールは関東方面での上映で、水戸、西荻窪、西新橋、青山で予定されているとのことです。予約が必要な場合もありますので、詳しくは岡村さんのホームページ「上映会・イベント実施のお知らせ」欄をご覧ください。
自身の人生経験を織り込み浦島太郎の物語をアップデートした老人を追う「郷愁は夢の中で」、地面に立つ十字架が「土」の字に見えるという、死期の近い老夫婦が主人公の「ブラジルの土に生きて」などなど、知られざる日本人の姿が、岡村さんの目=カメラを通して語られます。
作品は数十分のものから5時間に及ぶ大長編まで多種多様で、それは作品が求める必然によって決まっている、という感じ。撮影、編集、ナレーションなどすべてを1人で手がけ、一貫して自身が立ち会うことを条件に、年に数回来日して全国各地で上映会を開いておられます。作品は市販されていませんので、作品に触れることと作者に会うことがほぼイコール。しかもこちらは映画を観ているはずなのに、作者からもばっちり見られているという、ほどよい緊張感の中での真剣勝負が必須となります。
その岡村さんと、先日再会しました。場所は尼崎市内の酒屋・庄本商店。尼崎はもともとブラジルからの出稼ぎ労働者が多かったことから、ブラジル食材を売るようになったというお店です。ここで、最新作の「あもーる あもれいら 第3部・サマークリスマスのかげで」の試写会が開かれました。
ブラジルはパラナ州にある、アモレイラという小さなまちにある保育園の1年間を綴った3部作の完結編。壮絶な保育園の1日と主な登場人物を紹介した第1部「イニシエーション」、スラング入りまくりの会話主体の保育園児たちに、聖書の美しい言葉で競わせるお話大会が山場の第2部「勝つ子 負ける子」。さまざまな家庭の事情を抱える子どもたちと向き合いながら奮闘する、園長兼シスターの日本人女性に密着しています。登場する保育所は、実はこの酒屋に集まった人たちと物資やイベント出店の売り上げを送っているところだったという事情もあって、特別の感慨をもって観た作品。じつは1部と2部は、いずれも尼崎で上映会をさせていただいたことがあり、大きな反響がありました。
その第3部を世界で初めて観る、という大変光栄な場に立ち会うことになったわけです。店主の親子、NHKディレクター、神戸新聞記者、日系ブラジル人と、錚々たる顔ぶれが仕事そっちのけで集まり、作者も緊張する中、上映が始まりました…。
ドキュメンタリーであるというのに、いろいろな登場人物が出てくる群像劇のように見え、それぞれが(取材期間の中で)着地する完結編。あらすじを追うのは無粋なので避けたいと思いますが、1つだけ感想を書かせてもらうと、僕は孤軍奮闘するおばちゃんシスターに目が釘付けでした。子どもの行動から家庭の様子を敏感に察し、当事者に会いに行って何をするかと思えば、直接会って話をする。相手が困っていたら寄り添って、ひたすら聞き役に徹するという姿です。後からのインタビューで、「親からの悪影響は確実に子どもに受け継がれる」といった趣旨のことを淡々と語る姿には悲観も楽観もなく、同時にブラジルも日本もないと感じました。
第1部を拝見したのが2007年のことですから、1年間のできごとを4年に分けて、冷却期間を置きながら見たことになります。これを一気に観るのは、ちょっと辛かったかもしれません。やはり前2部を観ているほうがより深く感情移入できる作品ですが、これ1作でも充分理解できるようにナレーションが入れられています。
終映後は、会場が会場だけにアルコールを投入しての交流会。ナレーションではあんなに丁寧に喋っていた岡村さんが、ものすごい早口でまくし立てるさまに、みな笑いが絶えないのでした。あれは、初映の緊張感から解放されたのと、シリアスな映画を観たあとだから余計に、ということだったのかもしれません。
「あもーる あもれいら 第3部」は、試写会の意見と反応をもとに(!)最終調整し、来春の来日から順次上映していくそうです。尼崎の上映日程は未定ですが、できれば西宮のシンパのみなさんと共催できれば、という話をしています。今回の残りのスケジュールは関東方面での上映で、水戸、西荻窪、西新橋、青山で予定されているとのことです。予約が必要な場合もありますので、詳しくは岡村さんのホームページ「上映会・イベント実施のお知らせ」欄をご覧ください。
by tsuna_moto
| 2011-11-28 01:58
| ひと