2010年 03月 11日
写真と取材 |
一方、現在の取材はデジカメのみで、「転載や別用途で使うのはカンベンね」と口頭で釘を刺される程度。手続きは簡単になってありがたいのですが、何枚でも撮れる上に、モニタ上で画像を拡大できるために、写真に引っ張られてしまい想像力を挟み込む余裕がなくなることもしばしばです。モニタかじりつきで描くことは、僕にとっては若干の苦痛を伴う作業でしかなくて、本来の「モノに対峙しながら描く」楽しみとは結構遠い距離にあるものです。なので、最近は写真に惑わされないように、まずは印象だけを頼りにラフを描いてから、必要なところだけ写真を見るようにしています。一番幸せなのは、ラインにかじりつきで描くことなんでしょうけど、それはできない相談で。
フィルムもデジタルも一長一短あるものだな…などと考えていた折。今回神戸新聞で取材したパナソニックの炊飯器工場は、久々に「製造ラインは写真NG」という所でした。困ったふりをしてみたものの、内心はいい腕試しになるような気もして、ひたすらメモを取りながら歩きました。それが上の写真です。記事はすでに火曜に掲載されたので、これがどう仕上がったのか知っている方もおられると思いますが、今回はこのヘロヘロの絵から原稿を起こしています。
だけど、です。2002年から曲がりなりにも100以上の工場を見てきたので、本当に初めて見る設備はごくわずか。セル生産の風景は、同じパナソニック系列のノートパソコンや照明器具の工場で見ているし、基盤をつくる機械は富士通テンの工場でじっくり見せてもらいました。タテ型のプレス機だって、基本的な構造は同じです。と、こんな風に積み上げていったら、何となくできていたのが今回の原稿でした。
少し前から、写真とにらめっこしながらの作業に飽きているような気がしていたんですが、今回はそれが確信に変わったように感じています。入念に下描きをすると、線が硬くなって面白みもなくなってしまいますし。なので、4月からの「月刊島民」の新連載はライブで行こうと思っています。明日は、その取材で出かけます。どうなるか分からないけど、楽しみです。
by tsuna_moto
| 2010-03-11 02:34
| 雑記